スペイン国鉄
RENFEの特急ユーロメッドは、午前10時にバルセロナのターミナル、サンツ駅を出発した。昨日着いたばかりのバルセロナを後にして今日はバレンシア州の田舎町
Jéricaヘリカまで行き、そこでcasa ruralカーサ・ルーラル=農家(田舎)民宿に泊まる予定なのだ。地下に設けられたホームを離れた列車はすぐに地上に出てバルセロナの街なかをひた走る。今日もまた天気が優れず、空はどんより曇っている。昨晩8時過ぎに飛行機が到着した時には細かな雨が降っていた。陽光を求めて寒い日本から遥々と此処地中海地方まで来たというのに…。赤土の大地が目につく。街の郊外には工業地帯があり、高速道路の高架をくぐり抜けてさらに行くとあたり一面に畑が広がっていた。ほうれん草とおぼしき大きな葉っぱもの野菜が沢山植わっている。連棟のビニールハウスがあちこちにある。近郊野菜の栽培が盛んなようだ。大きな河川は見当たらないが肥沃な平野なのだろう。オリーヴの畑も見えてきた。
やがて地中海に沿って列車は走る。Costa Dauradaと呼ばれる風光明媚な海岸線。晴れていたらば、どんなに美しいことか。シャッターを押そうとする度に何故か隣りのイタリア人のカメラとタイミングが合ってしまう。
遠くスペイン北部、カンタブリア山脈に源を発する長流・
エブロ川のデルタ(三角州)を通過する。大河と思いきや意外なほど川幅は狭い。雨が降らず水量が少ないためだろうか。しかしスペインには珍しく?緑豊かで広々とした農地が果てしなく広がっている。
ひたすら続くオレンジの群れ。
バルセロナを中心とするカタルーニャ自治州と
バレンシア自治州の境界付近の風景。街らしい街が全く見当たらず、耕地さえもない。
もうここはバレンシア州。時計に目をやるとダイヤにかなりの遅れがでている。そういえば何処かで急に電車が止まったと思ったら10分間ほども反対方面から来る列車の通過待ちをしていたな…。バルセロナ〜バレンシアという大都市間の主要幹線であっても複線化していないのには少々驚いた。ノロノロ運転していた区間だってあった。なのに特に遅延を詫びるらしきアナウンスはなかった(と思う)…。日本の鉄道運営が正確で几帳面過ぎるのだ、と考えることにした。
時刻表で調べていた予定時間よりも30分以上遅れて12時45分過ぎに
Castellón de la Planaカステジョン・デ・ラ・プラナ駅に到着。ここで特急を降りて
セルカニアスと呼ばれる近郊電車に乗り換える。近郊電車に乗るにはまた別に券売機で切符を買わなければならない。これもちょっと不便だ。乗り換え時間の合間に隣り街のビジャレアルに寄って明日のサッカーの試合(
UEFAカップ ビジャレアル−
ゼニト戦)のチケットを買っておこうと考えていたのだが余裕がなくなりあえなく中止。ま、Hasta Mañanaアスタ・マニャーナ=また明日、買えばエエか。(←旅行2日目にしてすっかりスペイン流)
駅のカフェに入って
ボカディージョを食べる。大都市バルセロナを離れてカステジョンという地方都市まで来るとさすがにのんびりした空気が漂う。店員の女の子と馴染み客の会話を聞いていると、どうやらバレンシア語ではなくてカスティージャ語(スペイン語の別称。詳しくは
こちら)で話しているようだ。私がやたらとデジカメを触っていたら、前のテーブルの学生らしき女の子が席を立つ時に振り向いて、写真を撮ってあげましょうか、と声をかけてくれた。頼まれてもいないのに、見ず知らずの異邦人に対してなんという思いやり!彼女はちょっとした想像力(と実行力)が人に喜びを与える事をよく知っているのだろう。¡Muchas Gracias!
<続く>